k_baseの日記

野球ファンの戯言です

MLB、空前絶後の市場停滞のワケ(後編)

前編の最後でこの歴史的な市場の停滞はMLB各球団の買い渋りの性格によるものだと述べた。

 

では、なぜ各球団は今市場での投資に消極的なのか、、

 

そこには、来オフのFA市場が深く関わっている。

 

こう考えられる理由はいくつかあるが、まずあげられるのが、来オフFAとなる選手の豪華な顔ぶれである。

 

マチュア時代より全米1の才能と称されてきた2015年ナ・リーグMVP、ブライス・ハーパー(ナショナルズ)、長打力はもちろん、歴代最高クラスの強肩を誇り、今季からは三塁から遊撃へのコンバートも決定している若きスター、マニー・マチャド(オリオールズ)、2015年ア・リーグMVPで好守強打の三塁手、ジョシュ・ドナルドソン(ブルージェイズ)、投手でも昨季世界一、アストロズのエースでサイ・ヤング賞受賞歴もあるダラス・カイケル(アストロズ)らMLBを代表するスタープレイヤーが顔を連ねる。

 

また、惑星最高投手クレイトン・カーショー(ドジャース)が、オプトアウト(契約期間中ではあるが、選手が希望すれば契約内容を見直せる権利)を来オフに有している。

 

MLB各球団はこれら超大物選手が名を連ね、充実化する来オフの市場にこそ積極投資したいと考えており、このことが、今市場の消極姿勢の一因といえる。

 

また、こうした来オフの顔ぶれに比べ、今市場の大物選手はインパクトの面で劣るという事実もある。

 

前編であげた4選手、ダルビッシュ有(ドジャースFA)、ジェイク・アリエッタ(カブスFA)、エリック・ホスマー(ロイヤルズFA)、JDマルティネス(ダイヤモンドバックスFA)はいずれも好選手であるが、1億ドルを超える大型契約をしてまで獲得するのはややリスキーともいえる選手たちである。

 

ダルビッシュ、アリエッタに関しては実力は間違いなくMLBトップクラスである。ダルビッシュ奪三振王の経験もあるし、アリエッタなどはノーヒットノーランを複数回達成している投手である。

 

しかし、両者ともバットにかすらせないほどの支配的な投球をしたかと思えば、次の登板では、早い回で大炎上してノックアウトなど、要するに安定感がない。ダルビッシュはイニングを稼げない、アリエッタはクイックが苦手、そして両者ともに制球に若干の不安があるというように明確な弱点も存在し、1億ドルを投資するほどの投手であるかクエッションがつく面がある。

 

ホスマーは好守巧打の一塁手だが、どちらかといえばアベレージタイプの選手であり、長打力が期待されることの多い一塁手というポジションでは、それほど人気を獲得しにくいタイプともいえる。

 

JDマルティネスに関しては昨季のダイヤモンドバックス移籍後に覚醒し結局シーズントータル本塁打数を45本までにしたが、それまでは平均レベルのスラッガーであり、突如の覚醒も打者有利のチェイスフィールド、そして自身の弱点を熟知していないナ・リーグだからこそ、という見方もでき、今後もコンスタントに成績を残すかは信用に欠け、複数年契約には慎重にならざるを得ない選手ともいえる。

 

これら来オフの充実と今市場の物足りなさは今市場の停滞の大きな原因であるといえる。

 

また、特定の球団にとってはぜいたく税の存在も見逃せない。

 

ぜいたく税とは球団の選手の総年俸が一定額を超えると超過額に合わせて税金のように金銭を払わなければならなくなるシステムである。

 

今オフすでにマーリンズから巨大契約の大半を引き継ぎ、ジャンカルロ・スタントンの獲得に成功したヤンキース、来オフに絶対的エース、クレイトン・カーショーのオプトアウトがあり、莫大な資金が必要となる可能性のあるドジャースなどMLB屈指の金満球団が、ぜいたく税の関係から動きづらくなっている。

 

また、スタントン移籍の話がすでに出たが、マイアミ・マーリンズのファイヤーセールも今市場を停滞させる一因である。マーリンズがトレードという形で高額契約選手を他球団に放出し、その契約を移籍先の球団に引き継がせたことで、マーリンズと接触した球団はすでに補強予算がジリ貧状態ともいえる。

 

これら要因に加え、近年の大型契約締結選手の不良債権化からくる各球団の懸念、若手育成志向のGMの増加などが理由としてはあげられるが、もうキャンプイン目前である。

 

現地メディア、そしてファンも、球団は勝つことよりもコストを重視している、と冷ややかな視線を今市場に送り続けている。

 

ストライキの過去を持つMLBはその時、人気面においてどん底に落ちた。その苦い過去が起こりかねない、そこまで見通して考えるのは杞憂であろうか。